こんにちは!岐阜県北部、石川県南部(金沢市近辺)、富山県南部を中心に活動している税理士の平阪です。
働き方の変化やIT化の影響で、どこにいても仕事ができるようになり、フリーランスや個人事業主として働く方にとっては生きやすい世の中になってますよね。今後の世の中の流れとしても、身につけたスキルで世の中を渡っていく人が増えていくと思います。
ところで、現在フリーランスとして活動されている場合、単発的に仕事を引き受けることは多々あると思いますが、その仕事から得られた収入って、「事業所得」として申告する場合と、「給与所得」として申告する場合があるってご存知ですか?
事業所得か給与所得かで税金の計算方法が違いますし、思わぬ罠もあるので、今日はそのあたりのお話をしたいと思います!
まずは、「事業所得」と「給与所得」の定義を確認しましょう。
事業所得・・「自己の危険と計算において、独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して営まれる経済活動から生じる所得」
給与所得・・「雇用契約などの契約に基づいて受け取る所得」
これだけ読んでもなんのことだかよくわからないですよね。そこで、受けた仕事が事業所得にあたるか、給与所得に当たるのかの判断基準が下記の通りありまして、この判断基準を踏まえて総合的に判断することになります。
1その仕事を自分以外の人に代わりにやらせてはいけない
2時間的拘束性があり、時間によって給与が決まる
3作業の具体的な内容について報酬の支払い者から指揮監督を受けている
4まだ引き渡しを終えていない成果物が滅失しても報酬を受け取ることができる
5材料や用具等を報酬の支払い者から提供されている
1〜5がYESの場合は給与所得、NOの場合は事業所得、YES,NOが混じっている場合は総合的に判断します。
つまり、請負契約書があれば事業所得となるといったものではなく、実際の業務の実態が上記1〜5に照らしてどうなっているかを踏まえて判断することになります。
具体例で考えてみましょう。
例えば僕が読者であるあなたから記帳代行の仕事を依頼されたとします。
・依頼内容
パターンA 明日9時から17時まで会社に来て、通帳から会計ソフトに仕分け入力をお願いします。時給千円です。
この依頼について、給与所得か事業所得かを考えます。
1 自分の代わりに違う人を行かせられない
2 時間的拘束性がある
3 会社で細かい作業内容の指示があると考えられるので、指揮監督を受けている
4 成果物を求められていない
5 PC等は支払い者が提供
→総合的に判断して、給与所得になります。
パターンB 1月分の通帳データを会計ソフトで入力し、入力データを送ってください。報酬1万円です。
1 再外注しても問題ない
2 時間的拘束性はない
3 データをどのように作成するかはこちらに委ねられており、指揮監督は受けていない
4 成果物を求められている
5 PC等はこちらで準備
→総合的に判断して、事業所得になります。
パターンA とパターンBで、僕がする作業はいずれも「通帳から会計ソフトに仕分け入力をする」になります。しかし、パターンAではその収入は給与所得になり、パターンBでは事業所得になります。
ここまで「仕事を受ける側」からの視点で、収入が「給与所得」になるか、「事業所得」になるかを見て来ましたが、「仕事を出す側」からすると、支払い方法を「給与」として支払うか、「外注費」として支払うかということになります。
ここで重要なのが、「支払い者はなるべく外注費にしたい」と思っていると言うことです。理由としては、
①外注の場合、消費税の仕入税額控除が使える(簡単に言うと消費税の納税額が減る)
②外注の場合、基本的には源泉所得税を徴収する必要がなく、手間がかからない
③外注の場合、雇用保険などの社会保険に加入させなくて良い
こうしたメリットがあるため、支払い者側は実際には給与所得となるようなケースでも、事業所得となるような「外注費」で処理したがる傾向があります。
そこで問題になるのが、給与所得と事業所得では税金を出す方法が違うと言うところなんですね。
ざっくり説明すると、
給与
・給与所得控除が受けられる(給与が65万円以下の場合は税金がかからない!)
事業
・収入を得るためにかかった支出を経費にできる
こんな違いがあります。
なので、実態としては給与なのに、事業収入として申告している場合は、損をしているかもしれませんよ!